A Taste of Wharton MBA - ウォートン留学記

~商社、NPOからMBAへ。アラサー女子のウォートン留学生活ブログ~

ウォートン生にとっての「成功」とは?

多くの人がMBAに期待するものの一つとして、「リーダーシップ」開発があるだろう。

 

コラボレーティブなカルチャーで知られるウォートンでも、もちろんリーダーシップは重要なトピックだ。

 

ウォートンのリーダーシップ開発プログラムはThe McNulty Leadership Programというinstitutionによって運営されている。

 

どのようなプログラムがあるかというと、

・Wharton Leadership Ventures:南極や砂漠など、過酷な環境下で、ミッション達成に向けてチームを率いるという経験から自己発見、リーダーシップ開発を行う。冬休みや夏休みに行われ、7日間程度のプログラムに希望者が参加する。

・エグゼクティブコーチング:プロのコーチのセッションを数カ月間受けながら、周囲からのフィードバックをもとに自分理解を深め、希望する自己変革をはかる。

・リーダーシップフェロー:選ばれた2年生が、1年生のPre-termにおけるプログラムのファシリテーションを通じて、1年生のリーダーシップ開発のサポートをする。

・Nonprofit Board フェロー:フィラデルフィアのNPOに対し、ボードメンバーの一員としてアドバイスを提供する。

・P3 (Purpose, Passion and Principles) :5名ほどの学生チームで、週に1回集まり、「成功」「幸せ」「家族」といった価値観について自分の経験をもとに語り合う、8週間のプログラム。

 

この中でも、最近私が経験したP3について紹介してみたい。

 

もともと、前職で人の価値観に関して触れたり議論したりすることも多く、関心のある分野であったが、海外に来てほかの学生がどういう生い立ちからどういう価値観を持っているのかについてもっと知りたいと思っていた。

仲の良い友人とはこういうレベルまで話をすることがあるとしても、パーティで出会う仲間とこういったかなりパーソナルな部分まで踏み込むのは難しい。

 

私が入ったP3プログラムのチームは、全員2年生、在米経験も長い台湾系の女性、アメリカ人女性1人、アメリカ人男性2人、日本で生まれ育った私、という構成だった。

チームに一人、プログラム経験者のファシリテーターがおり、ウォートンの人気教授Richard Shellの著書を課題図書としながら、週に1回それぞれの家に集まり、「成功」「幸せ」「家族」「仕事」などのトピックについて2時間ほど語り合う。

 

初回のセッションで、自己紹介、このプログラムに参加した動機や何を期待するか、それをもとにこのチーム内でのルール(話した内容は口外しないなど)を決めてセッションがスタートした。

 

皆生い立ちは異なるものの、

これまで勉強の良くできる優等生で、職場ではスーパースターだった人という特徴はだいたい一致している。

 

一方で、目の前にある悩みは就職活動だったり、兄弟間の関係だったり、フィアンセと自分の母親との関係だったり、誰でも抱えてそうな悩みに一喜一憂していたりする(もちろん私もその一人である)。

 

初回の「あなたにとって成功とは」について話した際、課題図書に6人の異なる人生が描写されており、その中で自分の成功の定義に近いものから順位をつけていき、その結果をみんなで共有するということをやった。金融の世界で成功して裕福な生活を送る生涯独身の男性、教師として多くの教え子を持ちながらも娘の一人は家を出ていった女性、華麗なキャリアを持ち国際的に活躍する金融マンだが娘が障害を抱えている女性、田舎で自分の生活に十分な稼ぎを得、社会的に安定した職についた3人の子供を持つ大工など、それぞれ人生において得たものと失ったものは違う。

私のチームメンバーは皆、どれかを選ぶのは悩ましい、という反応だった。ビジネススクールという、資本主義の申し子のような場所で学ぶ学生にとっても、人生における大事なものは一つの価値観、答えに集約されるわけではないし、人生のタイミングでも変わる、と考えているということは新たな発見でもあった。

 

同時に、こうやって周りの意見を聞き、自分の意見を共有する過程で、自分自身考えさせられることが多い。直感的にこの生き方よりはこっちの生き方なんじゃないか?と思っても、それをうまく説明することができないことがあった。

アメリカでよく思うのは、どんな考えを持つかは個人の自由だが、どう伝えるかはある程度共有のルールがないと会話が成立しない、ということだ。自分の考えや結論に至った理由や思考プロセスをうまく説明できないと、コミュニケーションとして成り立たない。

自分自身なぜそう思ったのかわからないことについても、チームに伝えなきゃ、ともがくなかで、なぜそう思ったのか、どこに違和感を感じてどこに共感をしたのか、について自分の中でももう少し考えてみることにした。

そういう過程から、そして自分の意見に対する周りの反応から、自分でもあまり気づいていなかった自分の特長がわかってくる場面もあった。

例えば、仕事において何を大事とするか?という質問に対し、6つのキーワードに順位をつけていくというワークがあった。私は"Express"に高めの評価を置いていたが、他のメンバーはそうではなかった。なぜ高い順位をつけたのかをメンバーに説明するにあたって、そもそも、"Express"の意味するところがが人によってやや違っていたこと、また、私の生い立ちや性格が"Express”に人以上に価値をおいている背景にあったこと、がわかってきた。私にとっての”Express"はアートなどの表現ではなく、オリジナリティに近い。自分なりの考え、よりよくするためにどうしたらいいのかを常に考えること、それを周りに伝えること、そしてできれば行動に移すこと。それが自分が生きている価値を発揮したいという根源的な欲求からくるもの。自分にとってのドライバーになっていることに気づいた。

ここから、自分の選んだキャリアについても、ある意味自分の価値観や思いを体現していたい、というものがあったということに気づいた。どうやら、私は自分の信条(信念)みたいなものに人一倍情熱があるのかもしれない。

 

という説明を聞いていたメンバーは目を丸くして、"impressive"と言ったのだが、私にとってはその反応も全く持って新鮮だった。

 

自分の人生に影響を与えたイベントについてのセッションでは、過去にあった精神的につらい出来事を語り合ったり感情的にディープな会話になることもあった。

あまり初対面の人とこういった話題にはならないかもしれないが、プログラムとしてSafe Spaceが確保されているので、パーソナルな話も可能になる。

 

 

 

このセッションを通じて、「成功」の定義は、人によっても、その人がどういうcultural and social contextで生きていくかによっても違うと感じた。それは同じウォートン生であろうと同じではない。

一方で、「幸せ」な人というのは何が自分にとって「成功」なのか、自分をよく知っている人なのかもしれない。

まだ私もSelf-discoveryの道半ばだが、歩みを続けることが大事ということを気づかせてくれたP3と仲間たちに感謝したい。