専攻①:Finance
ウォートンではMBAには珍しく(?)専攻を決め、卒業に必要な単位をとることが求められている。
といってもそこまでがちがちに専攻に縛られることはないのだが、卒業に必要な19単位のうちだいたい4-5単位(専攻による)を専攻に充てる必要がある。
私のWhy MBAは、マネジメントに必要な知識を一通り学ぶ、というざっくりしたものであり、どちらかというとManagementの専攻が近かったのだが、最終的にFinanceとBusiness Analyticsを専攻することにした。
理由としては、より実用的な知識/スキルをつけることを重視したこと、今まで踏み込んだことのなかったFinanceとBusiness Analytics(主に統計を中心とした定量的な分析に関する科目)が単純に面白かったこと、が主なものである。
1年目に必修科目として、マクロ経済、ミクロ経済、ファイナンス、統計、マーケティング、マネジメント、オペレーションと一通り学ぶ中で、これまで漠然と考えていた経営(マネジメント)がどういう構成要素から成るか、ということがこれまでよりは見えるようになった。経営者にとって必要な意思決定能力やコミュニケーション能力、リーダーシップ能力(ビジョンを描く能力)などは座学で学べる範囲が狭いと思われるし、実践が最も力をつけてくれるものである一方、MBAではその意思決定の背景、プロセスで必要な、分析を通じて何が最適な選択なのかを理解するスキルを授けてくれるという理解をした。
現在ビジネスに必要なリソースは、人、モノ、金、情報といったところだろうか。その中でも金、情報/モノの最適なリソース配分を考えるバックボーンにあるのが、それぞれファイナンス、統計(Business Analytics)ではないかというのが私が得た仮説だった。
Financeでは主に、会社やプロジェクトの価値を評価する。それはどれくらいの初期投資に対してどれくらいの期間にどれだけのリターンが見込めるのか。また、その投資に関するコストをどう見積もるのか。コストも、株式を発行するのと借り入れを行うので違ってくるので、どうそこも計算に入れていくのか、といったことを考えるのが基本になる。
私は以下のFinanceの授業をとった。
Corporate Finance (必修科目)
Advanced Corporate Finance
Corporate Valuation
Finance of Buyouts and Acquisitions
Venture Capital and Finance Innovation
ウォートンはファイナンススクールと言われていた(いる?)だけあって、ファイナンスの教授陣の質は高いと思う。
また、授業も実践的でAdvanced Corporate FinanceやBuyoutの授業はほとんどケースをもとに、実際のプロジェクトのバリュエーションを行うスタイルだった。また、BuyoutではDeal Proposalといって実際の会社を選び、買収提案書を書くというとても実践的なプロジェクトも含まれていた(私たちのグループはNikeによるLululemonの買収を提案した)。
教授陣は実経験も豊富で、私のAdvanced Corporate Financeの教授はトルコ国有企業の私有化を政府にアドバイスした人であり、彼が授業の合間に話す例は興味深かった。
自分でエクエルをたたいて数値を出すことを求められる授業であり、一通り授業をとれば、Discounted Cash FlowやCompを用いたValuation、LBOモデルを作ることはできるようになる。ファイナンス業界への就職を考える人には就活にも役立つ内容である。
また、教授がウォートン生に求めるレベルも高い。ウォートン生なんだからここまでは妥協せずに知っておく必要がある、という言葉を授業でも何度か聞いたことがある。ウォートンで教育を受けたからには、Most skilled among other peersでないといけない、という。
ファイナンスの知識ゼロの私には時間と労力のかかるプロセスだったが、今後実社会で使うか否かに関わらず、考え方を学べたという点では、こういった教授の下でファイナンスを学べたのは幸運だったと思う。
教授が最後の授業で生徒に送ったメッセージは、「光陰矢の如し。日々を大事に過ごすこと。時間だけが唯一、一定の方向にしか過ぎていかないもの。」というもの。
時間を金銭価値に変えて考えるファイナンスの教授らしいなと思いつつ、身が引き締まる思いがした。