A Taste of Wharton MBA - ウォートン留学記

~商社、NPOからMBAへ。アラサー女子のウォートン留学生活ブログ~

ウォートンでの学び:日本を外から見る

ウォートンはクラス/キャンパス外でもいろいろな学習の機会を提供してくれる。

特にinternationalなプログラムとして単位も取得できるものとして、Global Immersion Program (GIP)とGlobal Modular Courses (GMC) がある。どちらのプログラムも国もしくは地域(South East Asia など)ごとにプログラムが分かれており、GIPは特にその国の経済的、文化的、政治的なビジネスドライバーを、事前のレクチャー及びその地域を訪問してビジネスリーダーやアラムナイに会うことで学ぶというもの。GMCはGIPよりも短く3-4日間その国を訪れ、特定のテーマ(例えばドイツ企業のオペレーション、イスラエル企業のイノベーション、中東と北アフリカの金融など)にフォーカスして、現地の企業を訪問して学ぶ、というものである。

 

実は、日本に対してもJapan GMCというプログラムが春休みの期間を利用して設定されている。

このプログラムのTeaching Assistant (TA)のリクルーティングに日本人学生に声がかかるのだが、せっかくの機会なので2年生の春休みを利用してTAをやってみることにした。

このプログラムはもともと日本企業(特に自動車産業)のサプライチェーンにフォーカスしたものだったが、数年前から”日本の競争力:日本のプロ―チ、進歩、今後のチャレンジ”と題した、よりBroadなトピックのプログラムだった。

具体的には、4日間東京で7-8社の企業訪問に加え、政府関係者や教授、起業家などの有識者の話から日本企業を取り巻くマクロ経済の状況やそれぞれの企業の事業から日本企業の競争力と直面するチャレンジについて学ぶ、というもの。

そもそも定員に対して2倍強の応募があったクラスでもあり、個人的には旅行等で忙しい春休みにそこまで日本に関心のある人がいることもやや驚きだった(アジアと言えば、やはり中国のほうが最近は話題に上がることが多い)。

このクラスは、MBA生だけでなく、Exective MBAの学生にも提供されているものであり、実際7割程度はEMBAの学生。日本が初めてという人もいるが、皆何かしら日本に関心のある人がほとんどだった。それは、個人的な関心(漫画やゲーム)でもありまたビジネス上のつながりであった。

 

TAをしての一番の学びは、アメリカのビジネスパーソンの目に日本という国、日本企業がどう映るのかを学ぶことができたことだろう。

プログラムのコーディネートは難しい部分もあるが、そのやり方についてサポートという形で関わることができたのもよい経験だった。日本企業のスピーカーとのアレンジは大変な作業で、TAとして関われたのはほんのサポート程度だったが、やはり綿密なPlanningが差を生むと思った。

それはさておいて、最も学びになった、アメリカのビジネスパーソンの目に日本がどう映るのかというところについては、一緒に同行しての彼ら/彼女らの反応を見ることや、レポートを読むことで知ることができた。

 

自分自身、アメリカに留学して、自分で見えていなかった、個人としての特性を意識することも多かったが、今回のGMCでそれは一人の日本人としての特性でもあるということを知った。

 

多くの学生があげていた日本(企業)特有の特長として

1.会社が自社の利益を超えた、社会の利益のために存在し事業をしている。例えば利益があがらなくても、その事業が顧客に求められているのであれば続ける。従業員の首は基本切らない、といったことはアメリカのビジネスパーソンからすると信じがたいことである。お金を超えたところに事業の原点があるというのは、日本人が信頼関係やそれに基づく忠誠を重んじるからだろう、というところを指摘する人が多かった。

持ちつ持たれつの関係を当たり前のように思っていたところもあったが、それは日本特有の価値観である。それは、ムラ社会ではないが、「社会」が個人に大きな影響を及ぼす日本文化があっての考え方のような気もする。

 

2.日本の課題として、高齢化に伴う労働力減少もあるが、最も大きな課題はイノベーションの欠如であり、日本のスタートアップカルチャーはまだまだ弱い。

大学を出て大企業で働くことが最もよい選択肢でスタートアップで働くというと周りに心配される、という話に衝撃を受けている人は多かった。現状維持を良しとするカルチャー、リスク回避的な日本人の気質が根底にある、というのは多くの学生が指摘するところだった。これは、まさに日本でも課題として取り組まれてきたところではある。一方で、価値観の部分はそこまで変わっていない気もする。私がアメリカに来て最も感じるのも、リスクテイクに関する考え方の違いだ。リスクを取らない限りリターンはない。リスクを回避するのではなくマネージする、という考え方はここに来るまで意識したことはなかった。

 

 

これらの特徴は、どういう会社に訪問して、どういうトピックについて紹介するか、また学生個人の関心に左右されるところも大いにあるので、一般化はできないものの、多くの学生がレポート上で同じトピックに触れていたのは驚きだった。

 

また、複数のコメントとして、日本は矛盾を内包する社会と言っていたのも興味深かった。つまり、100年続く会社、一途に伝統を守る会社がある一方で、ロボットといった先端技術を取り入れる、新しいものに興味を示す部分もある、というのだ。こういった見方は目新しいものではない気もするが、4日間日本を訪問しただけでこういったコメントが出てくるのも驚きだった(事前のリサーチもあったかもしれないが)。

 

このGMCを通じて日本を理解する人が少しでも増えてくれたらとの期待を込めて関わったが、私自身、企業を訪問する中で見るちょっとしたコミュニケーション(お互いが期待するもの)の食い違いを感じることも多かった。言葉にできない部分を察することができるのは、おそらく私が日本人であり、日本企業で働いた経験があるからだろう。一方で、それを伝えられなければ、そういう経験・バックグラウンドを持つ人には伝えきれない。

日本人として生きてきて、知らないところで自分の考え方に大きな影響を受けながらも、時々日本社会や企業での息苦しさみたいなものを感じ、アメリカでの生活に心地よさを感じる一個人として、私は今後どういう生き方がしたいのか、立ち止まって考えるよい機会になった。